大人の発達障害とは③
『発達障害』の別の一面として、“天才”と呼ばれる
特異な能力が話題として取り上げられることがあります。
数年前のテレビドラマでは、過剰な記憶力や過集中が特性の
『サヴァン症候群』が注目されました。
また、歴史上の偉人たちの中には、その天才的能力は発達障害による
ものだったのではないかと言われることもあります。
一方で、発達障害の人たちが皆、特異な能力を持ち合わせている
わけではなく、その割合は極わずかです。
そして、天才的と言われている人たちも、日常生活では毎日のように
トラブルを起こしているなど、『生きづらさ』の中にいたようです。
当相談室をご利用の方の中にも、天才的とまではいかなくとも、
高い芸術的能力や音楽的センスの持ち主がいらっしゃいました。
得意分野を活かす
発達障害は生まれつきの特性なので、治療する(治す)ものではありません。
その特性は個人差が大きく、それゆえに、自分に合った
仕事や生活スタイルを見つけることが大切です.
◆ご相談者のMさん(34歳 男性)は、大手メーカーに勤務していますが、
仕事の手順が覚えられない、同じミスを何度も繰り返す、同僚とトラブルを
起こしやすいなど、仕事や人間関係がうまくいかず
“生きづらさ”を抱えていました。
簡易調査によりMさんは聴覚が繊細で、普通の人には聴き分けられなほどの
“音”の違いに反応するという特性が確認されました。
そこで、繊細な聴覚が活かせる部署への移動を申請しました。
職場のご理解もあり、Mさんは打検部門(製品を叩いて、音で検査する)
への移動が叶い、現在は仕事上のトラブルも少なくなりました。
Mさん自身は、得意なことを活かすことで仕事の成果が認められ、
精神的ストレスも軽減されたと語り、仕事以外のことにも意欲的に
取り組むようになりました。
“苦手”はアイテムでカバーする
もう一つの発達障害である『限局性学習障害』の場合、
苦手なことは“便利な道具”を活用することで十分に対応できます。
◆ご相談者のKさん(31歳 女性)は子供の頃から算数が苦手でした。
大人になってからは、買い物のときにお釣りの計算ができなかったり、
金額の大小の違いがわからず、少額の買い物でも1万円札を使うなど、
毎日の生活にも影響を及ぼしていました。
特に買い物は、スーパーやコンビニの前で身体が震えてしまうほどの
強いストレスを感じていました。
簡易調査の結果、『算数障害』であることがわかりました。
算数障害は、数字の概念が乏しく、一桁の足し算を行うのも苦慮します。
Kさんには、ガードやスマホによるキャッシュレス決済を提案しました。
最近は現金以外にもさまざまな決済方法が進歩し、利用できる場所も
増えてきましたので、あえて現金を使わない生活スタイルが
ストレスの軽減に役立ちました。
活かせば生きやすくなる!
MさんやKさんだけでなく、自分自身の特性を知り、理解し、
受け入れることで、“活かす方法”をみつけることができます。
ADHD(注意欠如多動性障害)のSさんは、時間管理が苦手ですが、
あらかじめ設定した時間になるとアラームで知らせてくれる
アプリを活用してからは、時間に遅れることも少なくなりました。
『生きづらさ』を抱えている人の多くは、
その特性を、我慢や努力が足りないからだと自分を責めています。
決してそうではなく、生まれ持った特性であり、活かす方法は
無限にあるということを是非知って欲しいと思います。
さらに、周囲の人たちには、十分な理解とサポートが不可欠である
ということに気づいて欲しいと切に願います。
◆当相談室では、発達障害の簡易基礎調査を行っております。
詳細については、お気軽にお問合せ・ご相談ください。