うつ病は、今や大人だけの病気ではありません。

日本では子どものうつ病に関する本格的な調査は

おこなわれていませんが、2003年と2007年に北海道大学がおこなった

興味深い調査があります(北海道大学大学院保健科学研究院調べ)

それによると、小学生の7.8%、中学生の22.8%にうつ病の

リスクがあると報告されています。

子どものうつ病は、大人のうつ病に見られるような

典型的な症状とは異なることが多く、さらに小児精神科の専門医が

少ないこともあって、適切な診断が成されなかったり、

見落とされてしまうことも少なくありません

小児うつ病の原因と症状

子どもは、環境の急激な変化に対する適応能力が未熟です。

したがって、進学や転校、受験、いじめ、親の離婚など、

ストレスをともなう出来事がきっかけで発症するケースが多いようです。

さらに、大人の場合は生まれ持った気質や性格が発病に影響すると

言われていますが、子どもは大人ほどには性格の影響は受けません。

むしろ、育った環境やしつけ、乳幼児期の喪失体験といった

実体験が誘因になりやすいと考えられます。

ちょっとしたことで暴力!

子どものうつ病は、大人のうつ病にある“気分の落ち込み”という

典型的な症状はあまり見られません。

むしろ、“イライラ感”や“乱暴な振る舞い”で表現したり、

頭痛や腹痛、食欲不振などの身体的症状を訴えることが

多いために、他の病気と間違われたり、単なる反抗期として

扱われてしまったりと、専門医でも適切な診断は難しいようです。

子どものうつ病は、適切な治療を怠ると、成長してから別の症状を

引き起こすこともあります。

何となく元気がない!

◆子供のうつ病に良く見られる症状としては…

・落ち着きなく動き回る

・ちょっとしたことで怒ったり、暴力的になる

・イライラして勉強が手につかない

・頭痛、腹痛、吐き気などの身体的不調をたびたび訴える

・なんとなく元気がない

・今まで好きだった事(ゲームやスポーツなど)に興味がない

・食事が美味しく食べられない

・良く眠れない、または寝過ぎ

ただし、このようなサインだけで、すぐにうつ病とは判断できません

いつもと違う様子が続くときは医療機関を受診しましょう。

小児うつ病にみられる共通点

当相談室にも、年間10件ほどの小児うつ病に関するご相談が寄せられます。

件数としては多くはありませんが、数年前までは年間2~3件だった

ことから見ても、増加傾向にあることは確かです。

ご飯、食べたくない!

ご相談の子どもさんの話を聞くと、いくつか共通点があることに気づきます。

その一つが『食事がイヤ!楽しくない』

これは食欲がないということではありません。

◆ご相談者のE君(男児11歳小学5年)は、食事の時間が一番イヤだと言います。

なぜなら、「早く食べなさい!」「何をやっても遅い!」って怒られるから…

子どもにとって(大人もそうですが)食事は本来、“楽しいこと”の

はずですが、E君のように『食事』にストレスを感じている子供は

決して少なくありません。

(大人のうつ病でも『食事に興味がない』という人は多いようです。)

食事の時間が憂鬱!

『食事』は躾の場としての意義もあるので、親があれこれと

注意するのは当然ですし、子どもの方もその点は納得しています。

しかし問題なのは、食事の場で食事以外のことを持ち出して

感情的に怒ることです。

・今日のテストどうだったの?こんな成績じゃダメじゃない!

・宿題やったの? 〇〇ちゃんはしっかりとやってるわよ!

・ちゃんと片付けなさい!……などなど

食事は楽しく!

親にとってはそれなりの理由があってのことだとは思いますが、

おおにして、大人が抱えているストレスを、子どもに対する

躾や教育という形に変えて発散している場合も少なくありません。

食事は、単なる栄養補給だけが目的ではなく、

コミュニケーションの場でもあり、信頼関係を築く場です。

同じ物(食事)を食べることで信頼と安心が築かれるからこそ、

心の内に秘めた不安や悩み、イライラ感を表現できるのです。

大人にとって、現代がストレス社会であるように、

子どもにとってもそこは同じ。

食事が『楽しい時間』であるからこそ、

子どもの小さな変化に気づくこともできるのだと思います。

現在、新型コロナウィルスの影響で学校が休校になり、

家の中では子どもも大人もストレスMaxの状態にあります。

こんな時だからこそ、一緒に食事を作ったり、お手伝いをするなど、

子どもと一緒に食事を楽しむ工夫をしてはいかがでしょう。

みんなで作った食事をみんなで食べる……

親も気づかないような、子どもの意外な本音が聞けるかもしれません!