幸せ恐怖症
ご相談者の多くは、今抱えている悩みや問題を解決したい、
不安や苦しみや悲しみから解放されたいという思いで来室されます。
それは、「幸せになりたい!」ということでしょう。
しかし、ようやくつかんだ“幸せ”を怖がる人がいます。

“過去”と“未来”の不安心理
ご相談者のSさん(女性 40代)は、定期的に来室されています。
初めてのご相談は5年前、長男の不登校でした。
半年間のカウンセリングやサポートで不登校の問題は解決しました。
それから3か月後、次のご相談は夫の仕事が不調であること。
その次は遠方で暮らす老親の介護の問題…と、
次から次へと新たな問題を抱えては、その都度ご相談にみえます。
Sさんの話の中には特徴的なフレーズがあります。
「もっと早く○○すればよかったのに…」
「もし、△△になったどうしよう…」
まさに、“持ち越し苦労”と“取り越し苦労”です。

“不安”という名の“安心感”
以前のブログ(2020年1月29日「遺伝的気質」とは)でも
お伝えしましたが、物事の捉え方や感じ方は遺伝的影響を
強く受けます。
自信物質であるセロトニンの受容に抵抗する遺伝子や
不安感情に関係するノルアドレナリンの高分泌遺伝子が存在する人は、
不安でいることで安心するという心理状態に陥りやすいという
特徴があります。
悩みや問題の解決を望んでいながら、いざ解決してしまうと、
その意識を向ける対象が無くなるので、無意識に悩みや不安を探します。
その多くは“根拠のない不安”であり、過ぎてしまった事を悔んだり、
未だ見ぬ将来への不安など、まさに持ち越し苦労や取り越し苦労のことです。
さらには、“幸せな今”が崩されたときのショックを想像して、
崩される前に自ら手放してしまった方がいいと考えるタイプの人もいます。
これが『幸せ恐怖症』です。

幸せのコツは“今”に集中
遺伝的特徴を変えることは不可能です。
しかし、コントロールすることで“生きやすく”なります。
過ぎ去ってしまった事への後悔や、未だ起きてもいない将来への不安で
いっぱいになったときは、“今”起きている事の事実だけに
意識を向けましょう。
「子供が再び不登校になったらどうしよう…でも今日は学校に行っている」
「夫がリストラされるかもしれない…でも今日は出勤している」
「遠方の親が介護状態になったら困る…でも今日は元気に暮らしている」
事実だけをしっかり確認して、そこに○や×といった評価や
悲しいや苦しいというような感情を重ねてはいけません。
あくまでも、もう一人の別の自分が自分の姿を見るような感覚で、
“今”を観察することがコントロールのポイントです。

“幸せ”はどこにある?
幼い頃に読んだ童話「青い鳥」。
幸せの青い鳥を探して過去や未来に行くお話ですが、
その結末は、本当の幸せは手の届くところにあるのだ…
というような内容だったと記憶しています。
誰でも幸せになりたいと思うでしょう。
私の恩師は「人は幸せになるために生まれてきた」と
教えてくださいました。
“幸せ”とは、過去や未来にあるのではなく、
「今の心の捉え様」にあるのだと思います。
悩みや問題の真っ只中にあっても、さっき飲んだ水の美味しさや
部屋に差し込む陽の暖かさ、友のちょっとした優しい言葉……
そして、“今”生きていることが幸せそのものなのかもしれません
“今”は瞬間的に過去になり、その時の幸せも過ぎ去ってしまいます。
しかし、同時に未来は“今”になり、次の幸せをもたらしてくれます。
だから、当たり前の幸せや小さな幸せは怖がることなく、
遠慮することなく受け取っていいのだと思います。
幸せを怖がる必要なんて無いのだから……

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