現在、日本のうつ病患者数は100万人以上と言われています。

しかし、この数字は医療機関で診断を受けた患者数であり、

実際に医療機関を訪れるのは4人1人です。

潜在的患者数は400万人を超えると言う専門家の意見もあります。

一方で、医学的研究が進み、うつ病をはじめとした精神的疾患の

原因や治療法も進歩してきました。

ところが未だにうつ病を“心の病”だとか、性格や育てられ方が原因だなどと

誤解していたり、間違ったイメージを持つ人も少なくありません。

ストレスの多い現代社会に生きる私たちは、いつ、だれが

うつ病を発症しても不思議ではありません。

うつ病を正しく理解することは、治療だけでなくうつ病を予防するためにも

とても有効なことだと考えます。

うつ病は脳の機能低下

当相談室をご利用のご相談者の中にもうつ病の原因は

“性格が弱いから…”または“ストレスに弱いから…”と、言う人がいます。

当のご本人でさえ、うつ病を正しく理解していません。

うつ病は、脳の機能低下による精神的且つ身体的症状を伴う疾患です。

脳機能のうち、神経伝達物質(俗に言う脳内ホルモン)の分泌と受容の

バランスが崩れることで発症する病です。したがって心の病ではありません。

そのバランスは、過労や暴飲暴食、夜更かしなどの生活習慣の乱れや、

仕事、人間関係、社会状況の変化など、身体と心の両方にかかるストレスが

限界値を超えたときに崩れます。

また、最近の研究では、遺伝的にうつ病のリスクが高い気質が存在することが

わかり、遺伝的要因に環境的要因が重なったときに発症するということが

検証されています。

落ち込まないうつ病もある

うつ病の主な症状の一つに、“気分の落ち込み”があります。

何もヤル気が起きない、外出も人に会うのもイヤ、電話にさえも出たくない…

このような落ち込み症状が強い場合は、周囲から見ても様子が違うことは明らか

なので、その変化に気づきやすくうつ病を疑って受診するきっかけになります。

一方で、落ち込みだけでなくうつ病特有の精神症状をほとんど示さない

場合があります。その代わり、慢性的な疲労感や食欲不振、胃痛、下痢、便秘

といった消化器症状、腰痛や首肩痛などの身体的症状が顕著になります。

身体的症状が強いと内科や外科などを受診しますが、検査を受けても

あきらかな異常は見つからないケースがほとんどです。

当然、ご本人がうつ病を疑うこともなく適切な対処がなされないまま

身体的症状だけが悪化していきます。

ストレスが要因で身体的症状が強く、医学的検査でも異常が見当たらない…

このような場合、『仮面うつ病』が疑われます。

真面目で責任感が強く、他人に弱いところは見せられないと、

うわべを取り繕って頑張るタイプの人に発症リスクが高いと言われています。

ですから、身体症状だけで『うつ病』と診断されても、なかなか納得しない

人も少なくありません。

うつ病には多くの種類がある

うつ病は、一括りにできないほど多くの種類があります。

うつ状態と通常の状態を交互に繰り返す『単極性うつ病』、

うつ状態と躁状態の両方が起こる『双極性うつ病』、

さらには、特徴的な症状を示す『季節型』『非定型』『産褥型』『新型』…

社会環境の変化が著しい昨今、うつ病も旧来のタイプに加えて現代型という

新しいタイプのうつ病が増加しています。

あなたがうつ病にならないように、

あなたの大切な人がうつ病で苦しまないためには、

まずは正しく理解することが大切です……つづく

次回は、『うつ病かな?』と気づいときの対処法をお伝えします